すべて真夜中の恋人たち

 

こんな美味しいものを食べたとかリモートワークはどうだとか、SNSに浸った日常では川上未映子さんの小説は劇薬で、コーティングを引き剥がされて露出した心がひりひりと痛む心地がした。なんでもないシーンの描写も、単語ひとつひとつが発光してるようでかけがえがなくてやっぱりすごく好き。

 

指先に触れるまでの果てしない空間のことを考えていたら眠れなくなった。鮮烈な悲しみが少しずつ小さくなってゆく、あの薄い層のような時間の重なりのことも。