東山翔「Implicity」を読んだ

幼少期それなりに性被害を受けたのに(だからなのか)ロリコン描写が琴線に触れてしまう。さやわか/ふみふみこ「キューティーミューティー」で地下アイドルの女の子が周りの大人に言いくるめられきわどいグラビア撮影を経験するシーンは、世間知らずな10代を大人が騙すずるさが良く描かれていて結構来た。

 

それまでほぼ未踏の領域だったエロ漫画といふものを……というノリで「エロ漫画 サイバーパンク」で調べたところ、ヒットしたのが「Impilicity」だった。(成年コミックなので18歳未満の方はご遠慮ください。あと凌辱ロリに分類されるものだと思うのでトラウマのある方は読まない方がいい。トラウマを掘り起こす必要はない)すごいエロでSFでサイバーパンクという触れ込みだったので購入。絵柄が生々しくなくて綺麗だったし。

 

ひとことで言うと「ヒトの平穏な暮らしのためにバイオロイドが量産されている『ユートピア』的階層世界で、ヒトとバイオロイドの境界を(ロリを通して)問う」……みたいな(ひとことで言えない)とにかく、すごいエロでSFでサイバーパンク、その通りの作品で世界観に呑まれた。セリフで明言されてない部分の情報量が凄すぎる。素晴らしく濃密なレビューが書かれていたのであわせて読むと理解が進みます。

kamode.exblog.jp

 

バイオロイドは作中で「生体(ドナー)」と呼ばれていて、性的奉仕をするロリ存在として設計されている。顧客ニーズに合わせあらゆるスペックの「商品開発」がなされていて、オプションもいろいろある。ビッグサイトでやっているかのような生体の大型展示会が開催されているし、生体を「ドール」と呼ぶ風俗店や、生体が普通に学校生活を営んでいるかのようなテーマパークも存在する。訪れてやることといえばおわかりですよね。

なぜここまで産業化しているかというと、ヒト(特に少女)に対する性暴力を根絶するため。生体がそれをすべて請け負うことになっているのだ。「上」の世界では清潔で安全なセックスが奨励されている。(いっぽうで「下」の世界は半ばスラム化している。)生体にも意志はあるのだけど、性的奉仕を前提とする設計・教育を受けており適宜メンテナンスも行われるため問題はないらしい。ただし、ダークウェブ上では生体に飽き足らず本物のヒトの少女を希求する動きもみられ、生体だけでなくヒトも含むであろう大量のレイプ動画がアップされている。

 

「ヒト」と「生体」、「上」と「下」という区別が厳然たるからこそおぞましい。これぞSF。(なぜ一目でヒト/生体の区別がつくのかとか、生体の利用は奨励されているのかそれとも禁忌なのか……などわかりにくい部分もあったんだけど。)

 

特に、女性の私として良かったのは超ハイスペック生体「クオン」の存在だった。単に美少女というだけではなく、催淫効果のある体液という違法オプションが施されているため、彼女と交わったヒトは精を搾り取られて死に至る。ダークウェブの動画投稿者たちを駆逐するキーパーソンとなるのが彼女だ。

セックスにはいろいろな形があるけど、ごくごく一般的なピリオドといえば射精ではないか。男性側が満足すればそこが終わり。男性向けのAVやエロ漫画などのコンテンツにおいてはとりわけそうだと思う。「Implicity」でも男性器を持つ側が「征服する側」となるのだが、クオンの体液と並外れた性欲はそれを逆転する。レイプを楽しむ男たちを誘い込み、逆に征服してみせる様はまるでヒーローに見えた。

 

それと、「シーナ」が同い年の男の子とセックスするラストシーン。6歳の頃からずっと他人の性欲のために育てられてきた彼女が、初めて自分の快楽のために身体を重ねる。夜の砂浜で、満月に照らされながら騎乗位で涙を流す。自分が気持ちよくなるためだから騎乗位なんだよね。とても綺麗だった。

 

なぜロリエロ描写にぐっときてしまうのか……と今までの体験を思い出し複雑な気持ちになったり、まあそれだけ風化できているのだろう、と思い直したりするのだけど、「Implicity」はそんな私にとっても、とても良い作品だった。